当院では原則として、二十歳未満のお子さんに関するこころの診療を行っています(初診の対象年齢は中学生年齢:15歳以下となります)。お子さんが抱えるこころの問題はさまざまです。「同年代の子ができることが上手くできないようだ」「きょうだいにくらべて育てにくいが何か原因があるのではないか」「集団での協調性がないといわれているが大丈夫だろうか」、独特のくせ、チック症状、こだわり、学校参加に関しての心配、あるいは「子どもさん自身の気持ちが沈んでいる」、「不安や特定の事が気になってしまい日常生活に支障をきたしている」「眠れない、睡眠リズムが乱れている」「いらいらして怒りっぽい」など保護者である親御さんがどのように対応すればよいのか悩む問題からお子さん自身が感じる心の不調までとても多くのことがあげられます。
これらの様ざまな状態は一つの事柄のみがその原因であることは少なく、多くの事柄が複雑に関連していることが多いです。生まれながらの子どもさんがもっているさまざまな性質や小さい時からの養育環境、あるいは学校や友達関係などの社会的環境、そして、ご本人にとって心のストレスとして受けとめられる様々な体験、さらには、子どもさんの反応やサインに対して、周囲の大人たちがどのように対応したり、接してきたかといった大人たちの関わりの歴史、ときにこれらは悪循環的に作用し、子どもの心を追い詰めてしまうこともあるのです。
私たちは、これらの悩みや心配事について、様々な視点から検討し、その悪循環を解きほぐし、子どもさんがもっている本来の健康な心の状態を取り戻すことをめざして関わっていきたいと考えています。
まず、目の前にみえている様々な症状の特徴を把握します。子どもさんの診察や保護者の方からのお話から、あるいは発達に関する検査を通して、子どもさんの発達の傾向や特性を検討します。小さい時にどのような養育環境だったのか、ということも時にとても重要な判断材料になります。そしてその後の成長過程で子どもさん自身にどのような体験があったのか、ご本人が今の状態をどのように感じているのかなどを面接を通して尋ねることも進めていきます。つい最近の事ではない、昔のことが関連していることもあります。これらの方法で総合的な見立てを行います。
保護者である親御さん、あるいは学校の先生などがその症状や状態を理解してかかわることでその悪循環が軽減していくこともあります。時にお薬の力を借りてその悪循環を止める治療の選択をすることもあります。様々な体験が子どもさんの心の中でどのように受け止められ、感じられてきたのか、子どもさんとともに考えたり、感じることが治療としてとても大切になることもあります。
クリニック診療という限られた治療の場ではありますが、スタッフ一同子どもさんの心の健康回復のためにできる限りのご支援をしていきたいと考えています。