常位胎盤早期剥離はどんな病気?

常位胎盤早期剥離とは、胎児の娩出よりも前に正常な位置にある胎盤が子宮壁から剥離されることをいいます。
胎盤は通常、胎児が子宮内にいる間は子宮の壁に張り付き、お母さんから胎児に栄養と酸素を送る役割を果たしています。
胎児が生まれると同時に子宮の壁から剥がれ落ち、体外へ排出されます。

常位胎盤早期剥離では分娩が終了するより早い段階で正常な位置に付着している胎盤が剥がれてしまう疾患です。
一部が剥がれたり完全に剥がれてしまうこともあり、胎盤剥離自体は全妊娠の約0.4~1.5%の割合で起こるとされています。

これによって母体から胎児への酸素供給ができなくなり胎児が危険な状態になります。重症の場合、赤ちゃんに脳性麻痺を引き起こしたり命を落とすこともあります。

また、常位胎盤早期剥離は大量出血を引き起こすことがあり、これは血液凝固因子が急速に消費されるためです。周産期合併症の中でも重要な疾患として知られています。

常位胎盤早期剥離の主な症状は?

常位胎盤早期剥離は主に妊娠後期に起こり、性器出血と下腹痛が主な症状に挙げられます。
臨床症状は剥離の程度により異なりますが、出血、下腹部痛、子宮圧痛、子宮硬直などが多くみられます。
腹痛は持続性であったりけいれん性の場合もあります。次第に腹痛が強くなり、子宮内の出血の増加に伴い、子宮は板状に硬直し、子宮内胎児死亡、ショック症状が現れてきます。

その他に腹部を軽く押すと圧痛があることもあります。しかし症状がまったく現れないケースも少なくありません。出血も鮮紅色や暗赤色、持続したりごく少量であったりさまざまです。

特に妊娠高血圧腎症を持っている場合、胎盤の早期剥離によって重度の失血や腎不全、子宮壁内への出血を引き起こしやすくなります。

胎盤が突然剥がれ酸素供給量が一気に低下した場合には胎児が死亡することもあります。胎盤が徐々に剥がれたり部位が狭い場合には胎児の大きさが在胎週数に対して小さかったり、羊水の量が不足するなどもあります。また、徐々に剥がれた場合でも前期破水がその後に起こる可能性が高いです。

常位胎盤早期剥離の主な原因は?

常位胎盤早期剥離のはっきりとした原因は分かっていません。
そのため確実に予防する、発見する方法は現在のところ分かっていません。
ただ常位胎盤早期剥離のリスクを高めるいくつかの要因があり、喫煙、妊娠中に高血圧になってしまう妊娠高血圧症候群、慢性高血圧症、切迫早産、お腹への外傷などが挙げられます。また、過去に常位胎盤早期剥離を起こしたことがある場合、再度常位胎盤早期剥離が起きるリスクも高いと言えます。

その他にも高齢、血管炎やその他の血管の病気、抗リン脂質抗体症候群、羊膜感染、羊水過多、前期破水なども要因のひとつとされています。

転倒やお腹をぶつけるなどの外傷に関しては注意して予防することもできるため妊娠中に注意したい点と言えます。

また、妊娠高血圧症候群は高齢や肥満、持病のある妊婦がかかりやすい疾患です。体重と血圧の管理にも注意が必要です。

常位胎盤早期剥離の早期発見には胎動が弱くなった、少量の出血が続く、お腹が張っているなどのサインを見逃さないことも大切です。

常位胎盤早期剥離の主な検査と診断方法は?

常位胎盤早期剥離の検査、診断にはまず問診、内診が行われ、超音波(エコー)検査でさらに詳しく胎盤の状況を確認します。
問診・内診では自覚症状や、いつからその症状が始まっているか、出血があるかなどを確認します。

超音波検査では胎盤が剥がれている部分、面積にくわえて胎盤が子宮の出口を覆っていないかも確認します。
胎盤が子宮の出口を覆った状態を前置胎盤と呼び、常位胎盤早期剥離とは症状が似た症状が現れます。
胎盤が剥がれて、子宮との間に貯まった血液なども確認することができますが、血腫が見つからない場合もあります。

さらに胎児心拍数モニターを用いて胎児の健康状態も確認します。胎児が酸欠状態に陥っている可能性があり、心拍数に異常がないか、子宮の収縮の具合との関係性があるかなどを丁寧に確認していきます。

また母体の状態を把握するために血液検査や血圧の測定も行われます。妊娠高血圧腎症がある場合、リスクが高くなると言えます。

常位胎盤早期剥離の主な治療方法は?

常位胎盤早期剥離の治療には入院をして安静を保ったり、早急な分娩などが選択されます。
常位胎盤早期剥離は胎児・母体の両方にとって危険な状況になる可能性があるため、分娩が選択されることも多いです。

入院の場合は1日の大半を横になって過ごします。母体も胎児も命に関わる状態ではなく、37週未満の場合には入院による安静が推奨されることが多いです。
症状が軽減して胎児の危険もない場合には退院できる場合もあります。

できるだけ早期の分娩が選択されるのは、出血が続く、出血量が増える、胎児の心拍数に異常がある、37週以上である妊娠が満期などの場合です。
短時間での経腟分娩が難しい場合、帝王切開での出産になることが多いです。

また症状が重く、大量出血によるショックを起こしている場合や播種性血管内凝固症候群を発症している場合には集中治療室で輸液や輸血などの全身管理が行われます。

播種性血管内凝固症候群の症状がみられる場合、適した治療が行われます。この疾患は出血が増えたり多臓器不全を引き起こす可能性のあるリスクがあり特に注意が必要です。

常位胎盤早期剥離の初診に適した診療科目