伝染性紅斑はどんな病気?
伝染性紅斑は、第5病(Fifth disease)、または顔がリンゴのように真っ赤になることから一般的にはリンゴ病と呼ばれる流行性の疾患です。原因はパルボウイルス科パルボウイルス亜科エリスロウイルス属のヒトパルボウイルスB19と呼ばれるウイルスの感染で起きます。
正式名称はエリスロウイルスB19ですが、ヒトパルボウイルスB19の方が一般的です。主に、空気感染でうつり、感染力はそれほど強くありません。2-12歳くらいに多く(4歳頃がピーク)、季節は春~夏季(主に4、5月~9,10月頃に)を 中心に、感染が増えます。
感染症発生動向調査によると、1987年、1992年、1997年、2001年に流行していることから、ほぼ5年ごとに流行するようです。主に小児の病気ですが、大人への感染例も多く、看護学生や看護師などの集団感染も起きています。特に妊娠した女性への感染は注意が必要で、胎児水腫や流産の原因になる可能性があります。
伝染性紅斑の主な症状は?
不顕性感染(感染していても症状がない)も多く、軽くすむことも多いのですが、 妊婦が罹患すると流産などの原因となります。潜伏期はおおよそ7-25日(大体は、10~20日)です。 一般的には軽くすみ、熱はあっても軽度のことが多いようです。 感染後約1週間で、発熱、倦怠感、咳・鼻水、吐きけ・下痢、関節痛などのかぜのような症状がみられることもあります。
これらの症状が現れた4~7日目頃に発疹がでてきます。 発疹は顔面、頬部の蝶形紅斑(slapped cheek appearance)と全身、とくに手足のレース状紅斑が特徴です。
頬部に出現する発疹はくっきりとしていてやや隆起した紅斑です。 1~2日遅れて手足の主に伸側に紅斑のような斑状丘疹(きゅうしん)が現れ、やがて不規則に融合します。 この時軽いかゆみや熱感を訴えることが多くなります。 その後中心部から退色しますが、日光、温度、機械的刺激などによって再発することがあります。
伝染性紅斑の主な原因は?
伝染性紅斑は顔がリンゴのように真っ赤になるため一般的にはりんご病という名前で知られていました。しかし、長い間原因がわからない感染症で予防や治療が難しかったのですが、1983年にやっとヒトパルボウイルスB19というウイルスによる感染が原因であることがわかりました。
ヒトパルボウイルスB19は単鎖DNAウイルスです。ヒトパルボウイルスB19は普通は罹患者が咳やくしゃみをすることで飛沫が他の人の体内に取り込まれて感染します。
それだけではなく、罹患者が触った手すりやスイッチなどに残ったウイルスに触れた手で口や鼻を触ってしまい感染する接触感染も考えられます。
このような飛沫感染や接触感染だけではなく、稀ですが血液製剤からの感染もあります。
伝染性紅斑は、感染しても無症状の場合があるため、感染してウイルスが血液内に入って全身を循環している状態でも採血してしまう場合があります。
そのウイルスの入った血液を利用した血液製剤からの感染です。
伝染性紅斑の主な検査と診断方法は?
基本的には視覚で判断されます。ほおに境界がはっきりした赤い発疹ができ、腕に網目状の発疹が広がります。ただし発疹の状態だけではん、麻しんとの区別がつけられない場合もあるため、検査が必要です。罹患者の咽頭ぬぐい液、末梢血単核球、血液、尿を元にnested RT-PCR法で麻しんウイルスがあるかどうかを確認します。陰性の場合は麻しんではないことが確認できますが、まだ伝染性紅斑と確定したわけではありません。
パルボウイルスB19の検出はかなり難しいです。伝染性紅斑と確定するにはパルボウイルスB19の抗体検査が必要です。
しかし、パルボウイルスB19の抗体検査は妊婦以外には保険が適用できません。
そのため、ほとんどの場合血清学的診断または、ペア血清についてELISA抗体法でIgG抗体が上昇していることを確認します。
そのほか、特異的IgM抗体を検出して診断する場合もあります。妊婦の場合は、胎児に影響があるため症状がなくても迅速が検査が必要です。
伝染性紅斑の主な治療方法は?
伝染性紅斑には特別な治療法はなく、症状に合わせた対処療法をするしかありません。熱が出た場合にクーリングやアセトアミノフェン、頭痛や関節痛など傷みが激しい場合に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、かゆみが激しい場合に抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めをが処方されます。
伝染性紅斑は、自然に治癒できます。ただし合併症が出た場合は的確な治療が必要です。免疫不全者に起こる持続感染では慢性的な貧血が起きる可能性もあります。
また遺伝性球状赤血球症などの溶血性貧血患者は過性骨髄無形成発作によって急激な貧血症状が見られる場合も。
その場合はγ-グロブリン製剤を投与することで症状が緩和される可能性があります。
急な貧血症状が激しい場合は輸血が必要です。妊婦が感染した場合は胎児に影響がある場合がありますが、治療方法はありません。
胎児感染の場合は死産になる可能性が高く、綿密な観察が必要です。普通分娩ができ、無事生まれた場合は先天異常が見られた例はありません。
伝染性紅斑の初診に適した診療科目
- 小児科 ( 小児科の病院一覧 )
- 感染症内科 ( 感染症内科の病院一覧 )