解離性人格障害はどんな病気?

解離性人格障害とは、強いストレスに直面したり、それを認めることが困難な場合に、その体験に関する意識の統合が失われ、知覚や記憶、自己認識などが切り離されてしまう障害です。このような状態から複数の自分ではない人格が現れる症状を解離性同一性障害と呼びます。
これはかつて多重人格障害と呼ばれていた精神障害です。
複数の人格が同一人物の中に存在し、交代して現れるのが特徴で、日々の出来事や重要な個人情報などが記憶から抜け落ちたようになり、思い出せなくなる場合があります。
その他にも解離性人格障害の症状としては解離性健忘、解離性とん走、カタレプシーなどさまざまな症状があります。
これらの症状は一種の防衛反応とされており、つらい体験によるダメージを避けようとする働きと考えられています。

解離性人格障害は安心できる治療環境を整えることで自然に改善したり、別の症状へ移行するケースが多いです。
症状の自然経過を見守る姿勢も重要と考えられています。

解離性人格障害の主な症状は?

解離性人格障害は、症状として解離性健忘、解離性遁走、解離性同一性障害、離人性障害などの形をとり、また、身体症状に転換されて表現されることもあります。
解離性健忘の場合は、例えば日常生活では考えられないような状況に陥り、そのショックを処理しきれなかったためにその前後の記憶を自分自身で消してしまうなど、一時的な症状が多くみられます。
解離性遁走も同じような状況で起こる症状です。今いる場所からどんなことをしてでもすぐに立ち去りたいという思いから、 自宅や仕事場から消えてしまう、失踪して新たな生活を始めるなどが典型的な症状です。

解離性同一性障害は複数の人格が同一人物の中に存在し、交代して現れます。
記憶の空白がみられ、抑うつや不安などの症状も同時に現れる場合が多いです。
離人性障害は自分が自分であるという感覚が持てなくなり、自分を外から眺めているように感じられるものです。

解離性人格障害にはその他にもさまざまな症状があり、失声や痙攣、難聴など身体的な障害が現れるケースも多いです。

解離性人格障害の主な原因は?

解離性人格障害は震災や事故といった外部的な要因によって発症するケースもありますが、それ以外の家庭内における虐待や仕事場でのいじめなどのストレスや心的外傷の経験が原因となっているケースが多いです。
その他にも暴行、性的虐待、長期にわたる監禁、戦闘体験など慢性的に心的外傷が何度も繰り返されることによって発症することもあります。
つらい経験によるダメージを避けるために、緊急避難的に精神機能の一部を停止させることで解離性人格障害を発症するとされています。
特に小児期に極度のストレスを受けた場合には、解離性同一性障害を発症することがあります。

解離性人格障害はさまざまな症状が現れますが、共通しているのが記憶、意識、知覚、アイデンティティなど本来1つにまとめる働きが機能せず、一時的に自我同一性を失っているという点です。
解離性の症状は詐病の可能性が疑われる場合があります。周囲に理解や医師による診断が回復のために欠かせません。

解離性人格障害の主な検査と診断方法は?

解離性人格障害は患者の病歴や症状、問診などを元に、医師の判断によって診断されます。
専門医であっても診断が難しいケースも多く存在します。
精神医学的面接を行い、患者の状態を詳細に把握することが必要です。
面接は場合によっては長い時間をかけて行われます。催眠や鎮静薬を用いて患者がリラックスできるよう促す場合もあります。
解離性同一性障害の症状が現れている場合は、このような処置を行うことで別の人格が現れたり、記憶がない期間の情報が得られるケースもあります。
また、現れている症状が身体的な疾患によって生じている可能性がないかを確認するために、身体診察が必要になる場合もあります。

解離性人格障害の診断にあたり、何らかの目的のために偽りの精神的症状などを訴える詐病と区別することは重要です。
詐病である場合の典型的な特徴としてはよく知られた症状を強調して訴える、ステレオタイプな別人格を創り出す、病気であることを楽しんでいるなどが挙げられます。
複数の情報源から集めた情報を用いることも重要です。

解離性人格障害の主な治療方法は?

解離性人格障害の治療にあたっては、本人が安心できる治療環境を整え、家族や友人など周囲の理解を得ることや、主治医との信頼関係を構築することなどが特に重要と考えられています。
安全な環境や自己表現の機会を作りながらゆっくりと自然経過を見守る姿勢も大切です。
催眠や暗示を用いて解離性の健忘などを解消することはあまり効果が期待できないばかりか、症状を悪化させる可能性もあります。
また解離性の症状を悪化させる要因としては、病態を信用してもらえないことや演技だと思われてしまうことなどが挙げられます。
家族など周囲や患者本人が障害について理解を深め、症状を受け入れることが治療の一歩となります。

解離性人格障害に対し有効とされる薬はなく、抗精神病薬なども症状を悪化させる可能性があるとされています。
症状を悪化させている疾患に対しては薬剤が使用されることもあります。うつ症状に対する抗うつ剤、神経症症状に対する精神安定薬などが例として挙げられます。

解離性人格障害の初診に適した診療科目