水俣病はどんな病気?

水俣病とは、メチル水銀によって発症した公害病の一種です。
高度経済成長期になった日本で、熊本県八代海沿岸、新潟県阿賀野川流域で発生しています。
日本の4大公害病のひとつとされており、水俣病の他には第二水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病があります。工場排水の中に含まれていたメチル水銀が、海や川に排泄されたことでそこに生息する魚や貝を食べることでメチル水銀中毒を発症します。
水俣病自体は1956年5月に公式発見されていますが、応じた対策が取られたのが1968年であったため、その間にも多くの人が水俣病を発症しています。

メチル水銀中毒になると主に脳など神経系を侵すため、手足のしびれ、ふるえ、脱力などの症状が現れます。水俣病の発生初期の頃には発病から1ヶ月以内など短い期間に症状が進行し命を落とすケースも多く見られました。
水俣病は遺伝性はないものの、母親の胎内でメチル水銀に侵された子供が障害を持って生まれてくる胎児性水俣病患者も多く確認されています。
根本的な治療法は現在のところ確立されていません。

水俣病の主な症状は?

水俣病を発症すると、メチル水銀が脳など特定の神経系に影響を及ぼします。特に感覚、運動、体幹、視覚、聴覚などに関連する症状が多いとされています。
具体的な症状としては手足のしびれ、ふるえ、脱力などの他、視野が狭くなる、耳鳴り、耳が聞こえにくい、動きがぎこちなくなるなどが現れます。
手足の先にいく程、触れていることや痛みなどを認識する感覚が弱くなる、歩行が不安定でふらふらする、眼球が円滑に動かない、体の平衡が保ちにくくなるなども症状の一つです。
母親が妊娠中にメチル水銀を摂取した場合、生まれた子供は脳性小児マヒに似た症状もって生まれることが多いとされています。
これは胎児性の水俣病と認識されています。

水俣病が発生した初期の頃には狂ったような状態に陥ったり、意識不明となるケースも確認されています。
症状には個人差もあり、複数の症状が同時に現れることもあります。重篤な場合、命を落とす可能性もある疾患です。

水俣病の主な原因は?

水俣病は工場排水に交じって排泄されたメチル水銀が原因で発症します。メチル水銀はアセトアルデヒドをつくる過程で発生するもので、これはビニールの原料となるものです。環境を汚染する物質について、高度経済成長期の日本では十分な対策が行われていなかったために、環境に多く排出されていました。

海水中にメチル水銀が排出されると、食物連鎖によってそこに生息する貝や魚などの魚介類にメチル水銀が蓄積していきます。
その魚介類を人が食べることで人の体内にもメチル水銀が蓄積した結果、水俣病を発症します。
毛髪から徐々に体外に排泄される分もありますが、多くは神経を障害を生じ、一度神経症状が現れると完治することはありません。
目立った神経症状が現れていなくても、慢性型の水俣病患者も存在します。慢性型の場合、現れる症状は頭痛、疲れやすさ、においや味がわかりにくい、物忘れなど日常生活を送る上で障害となるものも多いです。
また差別を受けるなどの社会的な影響も考えられます。

水俣病の主な検査と診断方法は?

水俣病は主に現れる特徴的な症状から疑われます。
口周囲の触覚や痛覚の感覚障害、舌の二点識別覚の障害、求心性視野障害などが代表的です。
特に四肢末梢優位の感覚障害や全身性の感覚障害は診断上でも重要な所見と考えられています。
また、指定された期間に特定の地域に居住しており、魚介類を摂取した既往も診断に不可欠な要素です。
また、過去のメチル水銀の暴露を証明するために、当時の毛髪や臍帯を用いてメチル水銀を測定することもあります。この病歴と診察の2点において

メチル水銀の排泄に関して整備が行われてからは基準値を超えるメチル水銀は確認されていないため、診断を受ける場合には過去の経験を証明する必要があります。
水俣病の認定は現在では熊本県知事が行うものとされています。
「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づく法定受託事務として行われます。
水俣病と認定された場合、一時金、医療費全額、各種手当が支払われますが、近年新たに認定を受けた例はほぼありません。

水俣病の主な治療方法は?

水俣病に対しては、現在のところ神経障害に根本的な治療法は存在しないため、主にリハビリテーションや作業療法によって神経機能を回復させたり残存している機能を最大限に発揮させることが目標となります。
慢性期の治療としては、特に対症療法が中心です。薬物療法、物理療法・運動療法などのリハビリテーションを行います。
現れる症状を緩和する目的で薬剤が使用されるケースもあります。
西洋薬、漢方薬、外用薬などが症状に合わせて用いられ、疼痛やしびれなどの症状には物理療法やツボ注射なども行われます。

急性期にはキレート剤や透析によってメチル水銀を排出する方法が効果的ですが、神経障害を生じている段階では効果はあまり期待できません。
またメチル水銀の曝露量と健康障害との関係はいまだに解明されていない部分が多く、これまでに低濃度であってもメチル水銀の影響を受けていた人に関しては、何らかの影響が存在する可能性があると考えられます。

水俣病の初診に適した診療科目