今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け!今回は『35歳以上の妊婦さんは注意して「妊娠高血圧症候群」』をご紹介させて頂きます。

日本人の3人に1人が「高血圧症」

常に血管に負担のかかる「高血圧」は、動脈硬化を引き起こし、脳卒中など重たい病気につながるリスクの高い症状です。日本人はもともとの塩分を好む食生活にくわえて、近年、カロリーの高い欧米的な食事を摂る機会の増加などの影響によって、高血圧の人が多い傾向があります。

厚生労働省が3年ごとに実施する「患者調査」によると、高血圧を患う人は、すでに約1010万8000人を超えています。これは想像ができないほど、きわめて大きな数字といえます。3年前の調査より、約105万人(男性約63万人、女性約42万人)増えています。もはや、日本人の3人に1人が「高血圧症」との報告もあります。

妊娠20週以降の「高血圧」は注意して!

これまで長きにわたり、「高血圧は男性の病気」といわれてきましたが、近年では女性も高血圧に悩む人が増えています。女性の高血圧は、おもにホルモンバランスの変化によって生じていますが、早い人では30歳代で起こっています。

高血圧は、さまざまな合併症を引き起こす恐れがあるため、食生活や睡眠など日頃の心配りが大事になります。特に、妊娠中の女性は、体の様子が日を追うごとに変化します。「高血圧」もその1つです。

妊娠20週以降に「高血圧」、または「高血圧+タンパク尿」の症状がみられる場合、病院では「妊娠高血圧症候群」と診断されます。妊婦さん約20人に1人の割合で発症している病気です。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていた症状です。

妊娠週数によって「2つ」に分類される

妊娠高血圧症候群は、発症したときの妊娠週数によって「早発型」と「遅発型」に分類されています。「早発型」は、妊娠20週以降~32週未満で高血圧が発症した場合です。一方「遅発型」は、妊娠32週以降での発症がみられた場合に該当します。
発症すると、母体はもちろん、赤ちゃんへの影響も心配されます。ママの体に生じる変化では、
(1)倦怠感
(2)眠気
(3)疲労感
(4)急激な体重の増加
(5)尿の減少
(6)手足などのむくみ
(7)吐き気
(8)動機
などが挙げられます。

重症化すると「けいれん発作」を起こすことも

「早発型」の妊娠高血圧症候群は、重症化しやすく、ときにはママに「子癇(しかん)」と呼ばれる発作が起こり、全身にけいれんがあらわれ、意識を失うことがあります。子癇が起こる前兆には、
(1)頭痛
(2)耳鳴り
(3)みぞおちの痛み
(4)目のチカチカ
(5)視力や視界の低下
(6)顔や体のほてり
などの症状がみられます。

そして、ママに重い症状があらわれると、胎盤の状態が悪くなり、お腹の赤ちゃんには酸素や栄養がうまく届かず、発育不全などの影響が起こりやすくなります。特に、酸素不足が長く続くと、赤ちゃんは低酸素症にかかり、脳に障害を持つ恐れがあります。

ところが、「妊娠高血圧症候群」は、詳しい原因が現在のところ明らかになっていません。そのため、予防法が確立されていないのが現状です。また、妊娠高血圧症候群の特徴である「頭痛」や「吐き気」などが起こっても、妊娠での体調不良と判断し、発見が遅れるケースがあります。

「発症しやすい」のは、どんな人?

「妊娠高血圧症候群」にかかる確率が高いといわれているのは、もともと
(1)高血圧・腎臓病・糖尿病の持病がある人
(2)家族が高血圧の症状を持っている人
(3)肥満体質の人
(4)高年齢(35歳以上)で妊娠を経験している人
といわれています。

妊娠中は血流量が増え、血圧が変化しやすくなりますが、「収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上」、「拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上」で、高血圧と認められ、「妊娠高血圧症候群」が確定します。

また、尿中にタンパクが1日あたり0.3g以上発生すると「タンパク尿」が認められ、高血圧と合わせて「妊娠高血圧症候群」が確定します。

症状が軽ければ「自宅で」安静

「妊娠高血圧症候群」は、症状が軽度であれば、自宅で安静に過ごし、カロリーや塩分を制限した「食事療法」による経過観察が一般的です。血圧を下げる降圧剤は、お腹の赤ちゃんに影響が出る心配があるため、処方は慎重に行われます。

症状が重い場合では、入院して、食事療法と点滴などを使った薬物治療がすすめられるでしょう。「妊娠高血圧症候群」は、分娩後には軽快するケースがほとんどです。しかし、そのあと何年もたってから、高血圧やメタボリックシンドロームを発症しやすいことが、近年の研究で明らかになっています。「妊娠高血圧症候群」を発症した経験がある人は、その後の体調管理にも注意が必要になるでしょう。