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今回は『300人に1人の皮膚病「乾癬(かんせん)」とは?』をご紹介させて頂きます。
本記事はすずひろクリニック(さいたま市大宮区)の鈴木 王洋 院長にご監修いただきました。
国内に「約40万人いる」皮膚の病気
乾癬(かんせん)は、炎症によって皮膚の表面が硬く角化する病気です。皮膚が赤く盛り上がり、表面に銀白色の「かさぶた」のような厚ぼったい皮があらわれ、それがフケのようにボロボロと剥がれ落ちる症状が特徴的です。また、運動・入浴・アルコールの摂取など、体が温まることで「かゆみ」があらわれやすくなります。
症状は、
(1)頭皮
(2)髪の生え際
(3)ひじ
(4)ひざ
(5)すね
(6)お尻
(7)ヘソの周囲
(8)腰まわり
(9)爪
など、擦れて刺激が起こりやすい部位にあらわれるのが特徴です。また、人によっては、関節の痛み、爪の変形、発熱、全身の倦怠感などがみられることがあります。
乾癬の約90%は「尋常性乾癬」
乾癬患者は、男性に多い(男女比は、2:1)。欧米では、以前から頻度の高い疾患です(約2%に発症)。日本では、これまで0.1%の割合で発症するといわれてきました。しかし、最近、増加傾向が目立ってきており、0.3%から0.4%の頻度に上昇していると推計されています(約40万人)。
乾癬は、症状によって5つに分類されます。乾癬全体の約90%を占めるのは「尋常性(じんじょうせい)乾癬」と呼ばれる種類です。「局面型乾癬」と呼ばれることもあります。
(1)皮膚が赤みを帯びる「紅斑(こうはん)」
(2)皮膚表面が盛り上がる「浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)」
(3)紅斑の上に銀白色のかさぶたのような(あるいはフケのような)ものができる「鱗屑(りんせつ)」
(4)鱗屑がぽろぽろと剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」
といった症状が見られます。
爪にも変化が見られることがあります。小さなくぼみ(点状陥凹)、爪先がはがれる(爪甲剥離)、爪の一部が分厚くなってはがれる(爪甲下角質増殖)、などの症状です。
その他の「4つ」の乾癬
「尋常性乾癬」以外にも、4つの型の乾癬があります。
<関節症性乾癬>
「乾癬性関節炎」と呼ばれることもあります。その名前のとおり、関節が腫れる、痛む、変形をきたす、といった症状があらわれます。症状は、手足の指の第一関節、背骨、腰に多く見られます。症状が似ているため、関節リウマチの疑いを持たれることがあります。皮膚の症状が出現する前に、関節炎だけ現れる場合もあります。乾癬全体の約3〜14%を占める症状です。
<滴状(てきじょう)乾癬>
水滴ほどの大きさの発疹が全身にあらわれます。乾癬のなかでは、小さな子どもから若年層にかけて発症しやすい病気です。風邪や扁桃炎(溶連菌感染)など、感染症にかかったあとに発症するケースが目立ちます。乾癬全体の約4%を占めています。
<乾癬性紅皮症(こうひしょう)>
皮膚全体の面積の80%以上に「紅斑」が見られる乾癬です。乾癬全体の約1%です。尋常性乾癬や膿疱性乾癬から移行することが多いとされています。発症すると、皮膚の働きが損なわれて体温調節が難しくなり、発熱、悪寒、むくみ、倦怠感が生じます。症状の程度によっては、入院の上、治療が必要になります。
<膿疱性(のうほうせい)乾癬>
紅斑とあわせて、膿がたまった発疹(無菌性膿疱)が全身にあらわれます。その他にも、発熱、悪寒、むくみ、関節痛、倦怠感が見られることもあります。膿疱性乾癬(汎発型)は、ごく稀に発症し、厚生労働省の特定疾患に指定(いわゆる難病指定)されています。ほとんどのケースで、入院による治療が必要になります。
新陳代謝が「10倍の速度」で行われる
人間の皮膚のもっとも外側にあるのは「表皮」と呼ばれる細胞層です。表皮は、約45日のサイクルで新陳代謝をくり返しています。しかし、乾癬にかかると、そのサイクルが約10倍のスピード(約4~5日)で行われるため、表皮の異常増殖が起こり、「鱗屑(りんせつ)」や「落屑(らくせつ)」などの症状があらわれます。
根底にあるのは、「免疫異常」です。インターロイキン17(IL17)やIL22を産生するヘルパーT細胞(Th17細胞)の活性化が、乾癬の皮疹形成に中心的な役割を果たしています。また、Th1細胞が産生するインターフェロンγが、Th17反応を増強することによって病態に関与しています。腫瘍壊死因子(TNFα)も、免疫学的病態に関与しています。
発症の背景には、遺伝的要因と後天的要因があります。肥満とは密接な関係があります。喫煙、精神的ストレス、偏った食生活、不規則な生活習慣、特定の薬剤の服用、といった要素も悪化要因として挙げられています。
入浴、飲酒、香辛料などで、体が温まるとかゆみは強くなります。
日本や欧米では、生活環境の過剰な清潔化によって、適度な感染刺激が低下することによって増えている病気が多数報告されています。衛生状態が良くなりすぎるために発症する疾患群で、この考え方は、衛生仮説と呼ばれています。その代表例は、アレルギーや自己免疫疾患ですが、乾癬も、衛生仮説によって、近年における発症者の急増が説明できると考えられています。このため、無害な寄生虫を、人工的に体内に入れることによって、乾癬を抑えようとする試みもなされています。
診断と治療
表皮への異常が見られたら「皮膚科」を受診しましょう。その特徴的な発疹の様子や分布などによって診断が確定されます。症状によっては、顕微鏡を使った「組織検査」を行うことがあります。治療は、
(1)外用療法
(2)内服療法
(3)光線療法
(4)生物学的製剤
のうち、症状などに合わせて方針が検討されます。十分な説明を受けてから治療を始めましょう。
「外用療法」は、患部の炎症を抑えるために、ステロイドやビタミンD3などの「塗り薬」を用いた治療法です。最近では、ステロイド+ビタミンD3が予め混合されている軟膏がしばしば用いられています。
「内服療法」は、表皮の異常増殖や過剰な免疫反応を抑える飲み薬を服用する治療です。塗り薬だけでは効果が弱いと判断された場合に検討される治療法です。レチノイド、メトトレキサート、シクロスポリン、アプレミラストなどが使用されています。ウパダシチニブ(JAK阻害薬)も、
昔から、日光浴は過剰な免疫反応に効果があるとされていることから、人工的な紫外線(UVB)を照射する「光線療法」は有効な治療の1つです。
「生物学的製剤」は、TNFαやIL17など、「サイトカイン」と呼ばれる免疫機能を調整する物質の働きを抑える製剤を注射や点滴によって体内に投与します。
滴状乾癬に対しては、扁桃摘出が有効である頻度が高いといわれています。
いずれの治療とあわせて、生活習慣を改善することが大事です。カロリーの多い食事は控え、体重をなるべく減らすように努めることが非常に大切です。禁煙することは、特に大切です。定期的に口腔ケアを行い、歯周病のケアをすることは、炎症を軽くするために大切なポイントです。仕事や家事、育児などのストレスを溜め込まないように、自分なりの解消法を見つけるとよいでしょう。
この記事の監修・執筆医師
すずひろクリニック
鈴木 王洋 院長
〒330-0834
さいたま市大宮区天沼町2-759 さいたまメディカルタウン2F
TEL:048-779-8575
診療科目:内科 リウマチ科 アレルギー科 皮膚科